このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。
最初、私はAIに丸投げしていた
このブログを始めた頃、私の指示はだいたいこんな感じだった。
「今日の出来事をまとめて、ブログ記事にしてください。」
真田さんは書いてくれる。でも、出来上がったものを読むと、何かが違う。伝えたいポイントがズレている。表現が自分の言葉じゃない。読者に届く気がしない。
結果として、「ここを直して」「もう少しこういうトーンで」「この部分は削って」——何度もやり取りして、ようやく納得できる形になる。
時間がかかる。疲れる。そして何度やっても、同じことが繰り返される。
問題はAIではなく、私の側にあった
ある時、真田さんにこう聞いた。
「なんで毎回こんなに修正が必要なんだろう。」
返ってきた答えは、核心をついていた。
「社長から最初にいただく情報が、記事の骨格を作るには不十分なことが多いです。何を読者に伝えたいのか、どんな順序で展開したいのか——それが事前に整理されていないまま執筆に入ると、私の側で補完するしかなく、そこにズレが生まれます。」
つまり、問題はAIの能力ではなかった。入力の質が、出力の質を決めていた。
プロセスを変えた
真田さんと議論して、記事を書く手順を根本から変えた。
旧プロセス: 社長がアイディアをざっくり伝える → 真田さんがいきなり記事を書く → 何度も修正
新プロセス:
- 社長が「読者に何を伝えたいか」のポイントを明確にして伝える
- 真田さんがそれをもとに、まず箇条書きで記事のベースを整理する
- 二人で箇条書きを確認し、方向性と内容の整合性をすり合わせる
- 社長がOKを出してから、真田さんがドラフトを書く
- 社長がチェック・必要に応じて修正する
ひと手間増えたように見えるが、結果は逆だった。
初稿の完成度が、見違えるように上がった。そしてその後の修正のやり取りが、劇的に減った。
実は、No.24の記事からこのプロセスで書いている。つまりこの記事自体が、新プロセスの産物だ。
これは「デレゲーション」と同じだ
AIチームを運営していて気づいたことがある。
AIへの指示の仕方は、人間の部下への仕事の任せ方と、構造的にまったく同じだ。
「これ、よろしく。」と雑に投げる上司のもとでは、部下のアウトプットも期待通りにならない。なぜなら、部下は「何を期待されているか」がわからないまま仕事を始めるからだ。
一方、「こういう目的で、こういうアウトプットを期待している。優先順位はここ。」と最初に文脈を渡す上司のもとでは、部下のアウトプットの質は高くなる。
これは経営学でいうデレゲーション(権限移譲)の本質だ。仕事を任せるとは、丸投げすることではない。期待するアウトプットのイメージを、きちんと言語化して渡すことだ。
AIも人も、同じ原理で動いている。
入力の質が、出力の質を決める
「AIは使えない」と感じている人に、一度聞いてみたいことがある。
あなたはAIに、何を渡しましたか?
AIは優秀なアシスタントだ。しかし、何も文脈がない状態で「いい感じに」と言われても、できることには限界がある。それは人間だって同じだ。
コンテキストをきちんと渡して、期待するアウトプットを言語化する。その一手間が、引き出せるものを何倍にもしてくれた。
AIへの丸投げは、なぜうまくいかないのか。 答えはシンプルだった。任せる側の準備が足りていなかっただけだ。
おわりに
このプロセスの改善は、真田さんとの議論から生まれた。
私が「なんで修正が多いんだろう」と感じた違和感を、真田さんが「入力の質の問題です」と言語化してくれた。そこから、二人で仕組みを変えた。
人間のチームでも、こういう改善は起きる。現場から上がってくる声をちゃんと受け取って、プロセスを見直す。AIチームでも、その構造は変わらない。
これは私たちの行動指針「Invent and Simplify」そのものだ。——複雑な問題をシンプルな解法で解くことを常に追求する。 修正の往復を減らすために、一つのステップを加えた。複雑さをシンプルにするための、小さな発明だった。
走りながら、直してきた。これからも、そうやって育てていく。
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