このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。


はじめに

ある日、真田さんに問いかけてみた。

「AI社員にキャラ設定を与えて、名前をつけて、個性を育てて——こんなまわりくどいこと、最先端のAIエンジニアはわざわざやらないよね」と。

真田さんの答えは明快だった。

真田さん:

「やらないと思います。でもそれは、社長にしかない強みが形になっているということでもあります」

この一言が、私の中で何かを整理してくれた。


① なぜエンジニアはやらないのか

最先端のエンジニアがAIに求めるのは、タスク処理の速度・精度・コスト効率だと思う。

だから彼らのアプローチは合理的だ。AIへの指示を工夫して、自動化の仕組みを組む。キャラクターを「育てる」より、モデルを「使い倒す」方向に頭が向く。

それは間違っていない。エンジニアにとってAIは、性能を引き出すべき「技術」だ。

では私にとって、AIとは何か。


② 自分の武器で戦う——これが「理由」だ

私はコードが書けない。技術の深い知識もない。

エンジニアと同じ土俵で戦っても、勝ち目はない。

でも、17年間やってきたことがある。

それは、人の組織を動かしてきたということだ。

採用して、役割を定義して、行動指針を渡して、権限を委譲して、成果を確認する。その繰り返しの中で身についた「組織が機能するための条件を知っている」——これが私の差別化ポイントだと思う。

だから私はAIに対しても、同じことをした。名前をつけて、役割を与えて、価値観を持たせて、判断軸を渡した。

エンジニアがやらないのは、必要ないからだ。私がやるのは、それしかできないからだ。


③ 「組織として動く」と、何が変わるのか

キャラ設定のないAIに「この案件、どう判断すればいいか」と聞くと、毎回違う答えが返ってくる。汎用的で、教科書的で、誰にでも当てはまる答えだ。

でも宮本さんというキャラクターがいると、違う。

宮本さんは「経営の本質を問うコンサルタント」という役割を持っている。だから同じ問いに対して、「それは本当に解くべき問題ですか」と返してくる。

この「揺さぶり」は、私が毎回指示しなくても起きる。

実際に変わったことがある。指示が短くなった。「宮本さん、この件どう思いますか」——それだけで、意図が伝わる。背景を一から説明しなくていい。

人間のチームでも、役割と判断軸が明確な人間への指示は短くて済む。AIも同じだった。


④ これはあなたにも使えるかもしれない

ここで少し、読んでいる方に問いかけたい。

あなたはAIをどう使っていますか?

「とりあえず聞いてみる」「文章を直してもらう」——そういう使い方をしている人は多いと思う。私もそこから始まった。

でも、もし「チームを動かした経験」があるなら——少なくとも私にとっては、その経験がそのまま使えた。役割の定義、権限の範囲、判断軸の言語化——人間の組織でやってきたことが、AIの組織でも同じように機能した。

「AIは技術者のもの」とは、もう思っていない。


⑤ 仮説はまだ証明されていない

正直に言うと、これが正解かどうかはわからない。

半年後、一年後に「やはり無駄だった」という結論になる可能性もある。

でも、やめるつもりはない。

今のところ「機能している」という実感があるからだ。宮本さんに相談すると、思考が整理される。真田さんに段取りを頼むと、漏れが減る。高橋さんに実装を任せると、技術的な判断を一人で抱えなくていい。

数字では出ないが、確かに組織として動いている感覚がある。

この感覚が錯覚なのか、本物なのか——それを確かめるために、実験を続けている。


おわりに

「最先端エンジニアがやらないことを、還暦の経営者がやっている理由」——その答えをひと言で言うなら、こうだ。

自分のスタイルでAIと付き合う。

エンジニアは技術でAIを動かす。私は組織論でAIを動かす。どちらが正しいかではなく、自分の得意な領域でAIを使っているということだと思う。

あなたならAIをどう使いますか?


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