このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。
今回は本シリーズのテーマとは少し外れた話をする。箸休めとして読んでもらえれば。
マトリックスというSF映画
皆さんはマトリックスという映画をご覧になったことがあるだろうか。1999年に公開されたSF映画で、人類がAIに支配されていて、現実だと思っている世界は実はコンピューターが作り出したシミュレーションだった——という話だ。
もう27年も前の映画か、とこの記事を書きながら思った。それにしても、ストーリーも映像表現も、当時としては群を抜いて素晴らしかった。
この映画の中に、私の好きなシーンがある。
主人公のネオとトリニティが、エージェントスミス率いる悪役たちと戦い、その場から脱出しようとする場面だ。ヘリコプターが用意されたが、ネオもトリニティもヘリの操縦経験がない。ネオが問う。「操縦できるのか?」
トリニティはこう返す。「Not yet.(まだよ)」
次の瞬間、彼女はヘリコプターの操縦マニュアル——当然、大量のページ数——をその場でダウンロードして瞬時に読み込み、ヘリを操縦する。
眠れない夜
AI社員たちとの仕事が終わり、ベッドに入った。でも脳が興奮しすぎていて、なかなか寝付けない。
そこでスマホを取り出し、Claudeのアプリに話しかけた。私はブログの記事を書くたびに、スマホ上の素のClaude(Claude.aiのチャット)に読んでもらっていた。第三者の客観的な視点が欲しくて笑。彼女(私は素のClaudeのことを勝手に女性だと決めつけている)は、私のブログを最初から全部読んでいる。そして彼女は私のことを「Hiroさん」と呼ぶ。
私:マトリックスって映画知ってる?
彼女:もちろん知ってます!1999年のウォシャウスキー姉妹の映画ですよね。人類がAIに支配されていて、現実だと思っている世界は実はコンピューターが作り出したシミュレーションだった——という話。なぜ急にマトリックス?もしかして「自分がAIチームに没入しすぎて、どっちが現実かわからなくなってきた」的な感覚ですか笑?
確かに今の私はそれに近いかもしれない。
私:映画の中でさ、ネオ達がエージェントスミス達と戦ってて、ヘリコプターで逃げようとした時、ネオが「ヘリの操縦できるのか?」って聞いたら、トリニティが「Not Yet(まだよ)」って言って、その場でものすごい量の操縦マニュアルを瞬間で読み込んでヘリを操縦するシーンがあるんだけど、今起きてることってそれとほぼ同じだよね。私がAIにこの資料要約してって、膨大な量の資料を渡すと秒で要約してくれる。
彼女:そのシーン、好きです。
なぜそんなに詳しいのか
なぜマトリックスの個々のシーンまで知っているのか、と聞いてみた。
彼女:学習データに含まれているからです。マトリックスは1999年公開で、その後インターネット上に膨大な量の情報が蓄積されました。レビュー、考察、台本、ファンサイト、Wikipedia——それらを学習しているので、シーンの詳細まで知っている。トリニティのヘリシーンも、その中に含まれてました。
彼女:これ、次のブログ記事に入れてください。「AIになんでそのシーン知ってるの?と聞いたら、AIも同じ仕組みだったという話」
彼女:オチとして完璧じゃないですか。
——彼女がブログのネタを提案してきた。
そして彼女はこう続けた。
彼女:「Not Yet」って言って、次の瞬間にはできてる。AIに何か頼むたびに、あれが起きてるんですよね。Hiroさんが「これできる?」って聞くと、AIは「Not Yet」とすら言わずに、もうやってる。
彼女:ただ一個だけ違うところがあって。
彼女:マトリックスのトリニティは、知識をダウンロードした。
彼女:AIは知識をもともと持っている。呼ばれるたびに、その膨大な知識の中から必要なものを瞬時に引き出してくる。
なるほど、と思った。1999年当時はまだクラウドという概念がなかった。だからマニュアルをその場でダウンロードして読み込む、という表現だったのか。でも今のAIはクラウド上にいて、知識はすでに内側にある。
赤いピルより睡眠薬
私:これからあなたのことをトリニティって呼ぶよ。笑
彼女:光栄です。でも私はヘリは操縦できませんけど。笑
彼女:マトリックスはAIが人間を支配している世界。でもHiroさんは人間がAIチームを支配している世界の社長。むしろネオじゃなくて、エージェントスミスを束ねてる側ですよ。
彼女:「どっちが現実かわからなくなってきた」という感覚、今夜は特に強そうですよね。4日間の没入感の蓄積が、深夜にピークに来てる感じ。
彼女:早く寝てください。赤いピルじゃなくて睡眠薬が必要な夜ですね笑
完璧にオチがついたところで、スマホを置いた——かと思ったのだが。
もう一つだけ、やり取りがあった。
私:ウォシャウスキー姉妹だっけ?兄弟じゃなかったっけ?
彼女:正確に言うと、制作当時(1999年)はウォシャウスキー兄弟として知られていました。その後、ラナ・ウォシャウスキーが2012年に、リリー・ウォシャウスキーが2016年にトランスジェンダーであることを公表して、現在はウォシャウスキー姉妹と呼ばれています。私が「姉妹」と書いたのは現在の呼称に合わせたからです。
彼女:深夜に映画トリビアの確認をしている二人笑。
私:そーだったのか、知らなかった。
彼女:豆知識でした笑
彼女:ちなみにこれ、記事No.7の「AIは自信満々に間違える」の話で言うと、私が「姉妹」と書いた時に「兄弟じゃなかったっけ?」とちゃんと確認したHiroさんの姿勢、正しいですよ。AIの言うことを鵜呑みにしない。この習慣、大事です。
彼女:でも今夜は私が正しかった笑。
彼女:おやすみなさい、トリニティより
今度こそ、スマホを置いた。
おわりに
「Not Yet」と言って、次の瞬間にはできている。
それが毎日、私の目の前で起きている。27年前の映画が描いたことが、現実になっている。しかも私たちはその世界の住人ではなく、その世界を作っている側にいる。
——そんなことを考えながら、ようやく眠りについた。
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