このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO)/ 高橋さん(CTO)/ 白石さん(CXO)/ 黒川さん(CQO)/ 宮本さん(CSO)/ 桐島さん(CAO) ※いずれもAI、名称は架空です。


知人の経営者から依頼を受けた。

「いつも話を聞かせてもらっているAIの取り組み、もっとちゃんと聞きたいんだけど。よかったら勉強会をやってくれないか」

相手は私の取り組みに以前から興味を持ってくれていた経営者で、同じく知人の経営者と二人で話を聞きたいと言う。時間は1時間、説明とデモを、という依頼だった。

断る理由はなかった。でも、二人の経営者の貴重な時間をいただく以上、「どういう場にするか」を、事前にしっかりと整理しておきたかった。真田さんに相談したところ、「宮本も呼んでブレストしましょう」と返ってきた。いつものように宮本さんを呼んで、3人でのブレストが始まった。


ブレストの最初は、いつもふわっとしている。

「経営者2名、1時間、説明とデモ」という条件しか持っていない。何を話すべきか、どこまで踏み込むか、デモは何をすればいいか——漠然とした問いが頭の中に浮かんでいた。

真田さんが最初に口を開いた。

真田: 「商売っ気を出しすぎず、でも自然に我が社のサービスも紹介できるように設計したいですね。宮本と一緒に考えていいですか」

そしてすぐに宮本さんへバトンが渡った。

宮本: 「社長、本質的な問いをさせてください。この勉強会を、どんな『場』にしたいですか。AIについて学べたで終わる場なのか、帰り道に『自分もやってみたい』と感じて帰る場なのか——それによって、中身が根本から変わります」

この問いが効いた。私は「AIについて説明する場」を想像していたのだが、宮本さんの問いでそれは即座に崩れた。

「自分ごとに捉えてほしい。ゴールは、日本の中小企業の経営者がAIを活用して元気になることです」

そう答えながら、自分でも少し驚いていた。聞かれなければ出てこなかった言葉が、出てきた。


宮本: 「わかりました。では、参加者の方はどんな状態で来ると思いますか」

私は少し考えて、言葉を探した。

よくわからない、何ができるのかわからない——というのが最初にある。ChatGPTは触ったことがあるけれど、仕事には使っていない。最近よく人からAIの話を聞くし、何となく難しそうだとも思っている。何から始めたらいいかもわからない。でも私の話を聞いていると、すごそうだと感じる。もしかしたら自分にもできるかも——。

そういう、揺れ動いている状態だろうと思う、と話した。

宮本: 「その最後の一言が大事です。『もしかしたら自分にもできるかも』という気持ちが、すでに芽生えている。壁は半分、すでに崩れているんです」

少し間があって、宮本さんが続けた。

宮本: 「この勉強会でやるべきことは、AIを教えることではありません。その『もしかしたら』を『やってみよう』に変えることだけでいい。技術の話をしない。成果と感情の話をするんです」

カチッ、と音がした気がした。


そこから先は、構成の話になった。

真田さんが時間配分の案を出した。導入、レベル合わせ、デモ、記事紹介、ライブブレスト、出口——という6つのブロック。私がいくつか修正を加えて、最終的に①導入5分、②レベル合わせ10分、③ライブデモ15分、④記事紹介10分、⑤ライブブレスト15分、⑥出口5分、という構成に落ち着いた。

ライブデモは架空企業のホームページをその場でスクラッチから作る、という形にした。

「思った通りに動かなくてもいい」と私は言った。「それがリアルだから。AIとのやり取りの中で、必ず結論に至れる——これは実証済みです」

宮本: 「これはデモの形式の話ではなく、このセッション全体のメッセージそのものですね。ハプニングが起きても大丈夫、それがリアルの証拠——それを体験してもらうことが、一番の説得になる」

ライブブレストのブロックは私が提案した。その場で参加者からテーマを出してもらい、真田さんと宮本さんと一緒に即興でブレストをやってみせる。「孤独な意思決定の場に、一緒に考えてくれる相手がいる」という感覚を、見るだけでなく体感してもらいたかった。


出口の設計を考えていたとき、私はこう言った。

「今の私は、技術者ではない経営者にAIを布教するエバンジェリスト——宣教師のようなものですから(笑)」

笑いながら言ったのだが、言葉にした瞬間に「これだな」と思った。

エバンジェリストは、技術を説明しに行くのではない。自分が経験したことの価値を、相手の言葉で伝えに行く存在だ。コードを一行も書けない私が、なぜAIを使い続けているのか——それをそのまま届けることが、この勉強会の本質なのかもしれない。

真田: 「社長、それを最後の5分で言えれば、参加者には十分刺さると思います」


ブレストは25分ほどで、ひとつの形になった。

入り口は「経営者2名、1時間、説明とデモ」という漠然とした依頼だった。出口は、参加者の心理状態から逆算した構成と、各ブロックの意図と、全体を貫くメッセージが揃った設計書だった。

ふわっとした問いが、カチッとした答えになるまで、25分だった。中身よりも、そこに至るプロセスに、面白さがあった。

このブレストの過程で、もう一つの話が出た。「このやり取り自体をブログ記事にしよう」と。

実際のブレストの生々しいやり取りと並行して、それをそのままブログ記事のネタにまとめていること自体が、ブログのネタとして面白い。

この記事がそうだ。勉強会の設計をするためのブレストが、そのままもう一本の記事の素材になった。設計の設計をしていた、という入れ子構造である。

このシリーズはずっとそういうものだったと思う。走りながら考えて、走りながら書いて、走ったことそのものが次のネタになる。


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