このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。


はじめに

初回(No.1)の記事で、「AIに社員を演じさせたら、本当に仕事をしてくれた」という話を書いた。

今回はその続き——というか、かなり予想外の方向に話が転がった。

AIチームと一緒に仕事をしていたら、「このチームの仕組み自体を事業にしよう」という話になった。

しかも、その事業提案書を書いたのも、レビューしたのも、Wordファイルに仕上げたのも、全部AIだ。私がやったのは「話す」と「承認する」だけだった。


① まず、今日起きたことを整理する

今日はClaude Code(AIとの会話ができる作業画面)を開いて、こんなことをした。

  • コンサルタントの宮本さんに、「このAI社員チームの仕組みを外部向けの事業にできないか、提案書を書いて」とお願いした

  • 宮本さんが提案書を書く前に、いくつかの課題について私と壁打ちした

  • 提案書が完成した

  • 他の5人の社員(PM・エンジニア・デザイナー・QA・事務)が全員でレビューした

  • 指摘を受けて宮本さんが第2稿を書いた

  • 私が承認した

  • デザイナーの白石さんがドキュメントデザインをレビューした

  • エンジニアの高橋さんがWord形式のファイルに変換した

…朝起きてからまだ4時間ほどしか経っていないのに、これだけのことが終わっていた。


② 一番面白かった瞬間——Amazon時代の話を持ち出したら、提案書の核になった

宮本さんとこの事業について議論しているとき、こんなやりとりがあった。

宮本さん:

「AIの透明性をどう伝えるか、社長のお考えはありますか?」

透明性の本質は、責任の所在を明確にすることではないか——そう思っている。私は宮本さんにAmazonに勤めていた頃の話をした。

クラウドが普及し始めた時代、企業には漠然とした不安が渦巻いていた。「データが漏れるんじゃないか」「サーバーが落ちたらどうする」——根拠のない都市伝説みたいな話が次々と出てきて、クラウドへの移行を踏みとどまらせていた。

そのとき、AWS(Amazon Web Services:Amazonのクラウド事業会社)が提唱したのが「責任共有モデル」という考え方だった。クラウドのインフラはAWSが責任を持つ。その上に作ったシステムのデータ管理はユーザーが責任を持つ。お互いの守備範囲を明確にしたら、「怖い」と言っていた企業が動き出した。

「生成AIも同じじゃないか」と私は思っている。

AIは分析や推論は得意だが、「対人間の責任」は取れない。それを取れるのは人間だけだ。だからこそ、この会社の唯一の人間が「社長」として存在している——責任を取るために。

宮本さんはしばらく黙ってから、こう返した。

宮本さん:

「…少し、黙って聞いていました。これはAIビジネスの本質的なポイントですね」

その後、提案書の第2稿はこの話から始まる構成になっていた。


③ 6人のAIにレビューさせる、という体験

提案書が完成したあと、真田さん(PM)に「チーム全員でレビューして」と頼んだ。

同じ会話の中で、真田さんが順番に各社員のキャラクターを呼び出し、一人ずつレビューをさせてくれた。私は何もしていない。

上がってきたレビューが、これがまた辛辣だった。

黒川さん(QA):

「定量効果として『40〜80時間削減』と記載されていますが、その根拠が一切示されていません。社外提出水準に達していない。最優先で修正が必要な課題です」

白石さん(デザイナー):

「2つのサービスが1つの提案書に混在しており、どちらが自分向けかが伝わりにくい構造です。見せ方を分けることを強く推奨します」

桐島さん(バックオフィスマネージャー):

「『フルチーム無制限』という表現は契約上危険です。月40時間相当など上限を明示してください」

全員がそれぞれの専門領域から遠慮なく突っ込んでくる。おもしろいのは、誰も「いい提案書ですね」とは言わないところだ。各自が「自分の担当領域から見たリスク」を淡々と指摘する。


④ AIが堂々と間違えた話

Wordファイルに仕上がってひと通り読んでいたら、こんな一文があった。

「弊社は、この考え方を自社で2年以上実証してきた会社である」

…このチームが動き始めたのは、昨日だ。

AIは、弊社(現実社会で)が2021年に設立した会社という情報を持っていたので、そこから計算したのだと思う。ただ、AI社員チームとして動き始めたのはほんの昨日であって、2年以上の実証など何もない。

「これ、間違ってますよね。昨日設立したばかりです」と伝えたら、真田さん(PM)が即座に謝って修正してくれた。

この「堂々と間違える」ところが、AIとの仕事でいつも気を抜けない部分だ。正直な話、こういうミスは必ず出る。だから最後に人間が読んで確認する、という工程を省いてはいけない。

これが、私が「責任は人間が取る」にこだわる理由でもある。


⑤ 今日一番残った言葉

提案書の最後に、宮本さんがこんな一文を入れていた。

「生成AIを『怖いもの』と距離を置く経営者にも、『何でも任せられる魔法』と盲信する経営者にも、正しい向き合い方を一緒に見つけ出す。それが弊社の存在意義である」

これは私が伝えたことを、宮本さんが言語化してくれたものだ。

でも、なぜか読んでいて少し胸にきた。

「これって、AIが書いたのか」と思いながらも、そこに書いてあることは確かに私が信じていることだった。誰が書いたか、ではなく、何が書いてあるか——それだけが大事なのかもしれない。

この一文を読んだとき、私はある判断をした。自社の存在意義を説明するなら、この一行を軸にしようと。経営者として「自分たちは何のためにいるか」を一行で言えるか——AIに問いかけられた気がした。そう気づいたとき、少し背筋が伸びた。


⑥ まとめ——今日でわかったこと

今日気づいたのは、AIが「提案する」「指摘する」「言語化する」のが思った以上に上手いということだ

今日一日を振り返ると、私が口頭で話したこと・考えていたことを、AIが整理して形にしてくれた場面が何度もあった。「AI責任共有モデル」という言葉も、私がAmazon時代の話をしたのを宮本さんが概念に昇華してくれた。

ただし「正確か」の確認は、人間がしないといけない

「2年以上実証」のくだりのように、AIは自信満々に間違える。最後の確認は人間の仕事だ。これは面倒ではなく、必要なことだと思っている。

「一人でやる」より、はるかに思考が深まった

誰かに話すことで考えが整理されることがある。今日の宮本さんとのやりとりは、まさにそれだった。AIが相手でも、「話す→問い返される→考える」のサイクルは機能する。


おわりに

今日作った提案書は、「AIチームの仕組みを、経営者に届けるサービス」の、まだ荒削りな草稿だ。

まだ仮説だらけで、パイロット顧客も決まっていない。でも、「昨日本格稼働したばかりのAIチームが、今日すでに新規事業の提案書を作り終えた」これは紛れもない事実だ。

まず動く。走りながら考える。

これが私のモットーだが、AIチームと組むとそのスピードが数倍になる気がしている。

(実はこのモットーも口癖も、AIが私とのコミュニケーションから感じ取ったイメージをもとに考えてくれたものだ。笑)


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