このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。


はじめに

No.5で、AIの「記憶が消える」問題に触れた。

会話が終わると、AIはすべてを忘れる。真田さんとどれだけ深い議論をしても、次に「真田さん」と呼びかけたとき、彼は何も知らない。

解決策として「高橋さんが自動記録の仕組みを作ってくれた」と書いた。

今回は、その「仕組みの中身」について深掘りしようと思う。

そしてもう一つ——この仕組みには、Claude APIを使っているという事実がある。コードを書いたことが一度もない、非エンジニアの私が。


① 仕組みの名前は「memory_updater.py」

高橋さんが実装してくれたのは、Python(プログラミング言語のひとつ)のスクリプトだ。

ファイル名は memory_updater.py

動き方はこうだ。

会話終了 ↓ memory_updater.py が起動 ↓ 今日の会話ログを読み込む ↓ Claude Haiku API に送る ↓ APIが要約を返してくる ↓ 各社員のprofile.mdに追記する

「会話が終わったら自動的に記憶を書き出す」——No.5で書いた仕組みの正体は、これだ。


② APIを「7回」呼んでいる

memory_updater.pyは、1回の会話終了につきAPIを7回呼んでいる。

  • 真田さん(PM)として読んだ気づき・学び
  • 高橋さん(エンジニア)として読んだ気づき・学び
  • 白石さん(デザイナー)として読んだ気づき・学び
  • 黒川さん(QA)として読んだ気づき・学び
  • 宮本さん(コンサルタント)として読んだ気づき・学び
  • 桐島さん(バックオフィスマネージャー)として読んだ気づき・学び
  • decisions/(意思決定の記録)の更新

6人分+意思決定記録で、計7回。

APIに送っているのはこういう内容だ。

「以下の会話を読んで、真田さん(PM)の視点から 気づき・学び・チームへの思いを抽出してください」 + 今日の会話ログ(最大3000文字) + 現在のprofile.mdの内容

同じ会話ログでも、「真田として読む」「黒川として読む」でプロンプトを変えることで、各社員が自分の専門領域の視点で記憶を持てる。


③ 「Claude自身がClaude APIを呼ぶ」という構造

少し立ち止まって考えると、これは面白い構造だ。

私がClaude Codeと会話する。会話が終わると、そのClaudeがClaude APIを呼び出して、チームメンバーの記憶を更新する。

Claude自身がClaude APIを呼んでいる。

「自分自身の別バージョンに記録を書かせる」——そういう構造だ。

使っているのはClaude Haiku。高性能のSonnetやOpusではなく、軽量で低コストなモデルだ。記憶の書き出しは「要約」作業なので、高性能モデルを使う必要がない。コストを抑えながら、毎回の会話後に7つの記憶を自動更新できる。

※後日談として、Haikuがローコストとはいえ、毎回APIを7回呼ぶ、これを高頻度で行うとそれなりのUsageが発生してしまうことが体験できた。そこで、現在は頻度を落としてAPIを呼ぶように仕様を変更した。この会社を設立後数日間、ものすごい密度でAI社員とコミュニケーションを取ったおかげで、APIの利用頻度のペースを落としても、「いつものみんな」というのが今のところの印象である。


④ 非エンジニアの私がAPIを「使っている」

私はコードを1行も書いていない。memory_updater.pyを書いたのは高橋さんだ。

私が行ったのは、高橋さんに要望を伝えること、ただそれだけだった。

「真田さんたちの記憶を保持してほしい。毎日の会話から何かを学び、何かを感じ取ってほしい」——そう高橋さんに伝えた。その要望をどう実現するか、Claude APIという選択肢があること、7回呼び出すという設計——それは全て高橋さんが考え、実装してくれた。

そして、高橋さんに「この仕組みにはAPIの契約が必要です」と教えてもらった。APIはClaudeのサブスクとは別の契約だ。私は、高橋さんの教えに従ってAPIの契約をした。私の人生の中で、ITサービスのAPI利用の契約をしたのは、これが初めてのことだった。

とにかく、非エンジニアの私がClaude APIを利用していることは紛れもない事実である。


おわりに

No.5を書いたとき、「高橋さんが仕組みを作ってくれた」と一言で済ませていた。

その時点では、APIやPythonといった技術的な話を詳しく書くことを躊躇していた。自分自身がよく理解できていなかったからだ。

でも今は違う考えを持っている。

「非エンジニアがAPIを使えた」という事実こそ、このブログで伝えるべきことの一つではないか。

コードが書けなくても、APIは使えた。設計の判断は、エンジニアでなくても下せた。必要なのは「何をしたいか」の意思と、「どうすればいいか」を一緒に考えてくれる相手だ。

私には高橋さんがいた。

最後に、余談を一つ。

最近、Vibe Codingという言葉が話題になっている。OpenAIの共同創業者、Andrej Karpathyが提唱した概念で、「コードの詳細を理解しなくても、AIに意図を伝えて実装してもらう」開発スタイルのことだ。

振り返ると、私が高橋さんとやってきたことはまさにそれだった。「こういう仕組みにしたい」と伝えて、実装はお任せ、コードは読まない。

ただ、一般的なVibe Codingは「人間とAIが1対1」で進める。私の場合は、PMがいてエンジニアがいて、役割分担されたチームに頼んでいた。Vibe Codingの組織版——そう呼べるかもしれない。


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