このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。
はじめに
この記録は今回で31本目になる。
ここまで書いてきた記事はすべて、その日に起きたことをそのまま書いてきた。試して、失敗して、気づいて——その繰り返しの記録だ。「まず動く。走りながら考える。」スピード重視で取り組んできた。
先日、Claude Codeの使い方を解説した動画を見る機会があった。「スキル」「エージェント」「Claude.md」「コネクター」——4つの機能を順に説明していく内容だった。
30本の試行錯誤の記録が、外部の視点を通してはじめて「設計図」として見えた瞬間だった。設計図を見ずに家を建てて、あとから「ちゃんと設計通りになっていた」と気づいた——そんな感覚に近い。
だから今回は、振り返りとして書く。これまでのおさらいも兼ねて、バラバラに積み上げてきた経験を4つの柱で整理してみたい。
第一の柱:Claude.md——チームの憲法
Claude.mdとは、AIチーム全員が共通して守るルールを書いたファイルのことだ。
「必ず日本語で出力する」「作業が終わったら報告する」といった基本的なことから、セキュリティルール、緊急時の対応まで、チームの行動の基準をすべてここに書く。
我が社では、最初は「行動指針」と呼んでいた(No.2参照)。
AIチームに渡したのは、我が社の社員としてどう動いてほしいかという価値観の話だった。それがいつの間にか、セキュリティのルール、本番環境へのデプロイ承認フロー、外部コンテンツのプロンプトインジェクション対策、果ては「新機能を試す前は必ず真田に相談する」という社内ルールまで——少しずつ積み上がって、今では我が社の「憲法」のようなものになっている。
動画の中でこんな説明があった。「最初から完璧に決める必要はない。使いながら、必要だと感じたタイミングで都度追加していけばいい」と。
まさにそうだった。最初から設計したわけじゃない。何か問題が起きるたびに、「じゃあこれもルールにしよう」と一行ずつ増やしてきた。気づいたら、かなり分厚いチームのハンドブックができあがっていた。
第二の柱:スキル——繰り返す仕事の「型」
スキルとは、特定の作業手順を定義したファイルのことだ。
/スキル名 と入力するだけで、あらかじめ決めた手順通りにAIが動いてくれる。毎回同じ説明をしなくていい。人間で言えば、「マニュアル化された定型業務」に近い。
我が社で最初に作ったスキルは、クライアントのウェブサイトに定型化されたコンテンツを追加する作業だった。
毎回、同じファイルを同じ手順で更新する。HTMLの作成、写真の配置、一覧ページへの追加、前の記事へのナビゲーション更新、トップページの更新——5つのファイルを、決まった順番で更新する。
「これ、毎回同じことをやっているな」と気づいたとき、スキルとして登録した。次回からは /add-report と入力するだけで、AIが全手順を覚えた通りに実行してくれる。
スキルは「覚えてほしい手順」を一度書けば、何度でも再現してくれる仕組みだ。繰り返し発生する作業ほど、スキル化の恩恵が大きい。
毎回同じ手順を繰り返していると気づいた作業が、スキル化の最初の候補になる。
第三の柱:エージェント——役割を持った「専門家チーム」
エージェントとは、特定の役割と性格を定義されたAIのことだ。
単なるAIに指示を出すより、役割と禁止事項と口癖まで定義した「キャラクター」に仕事を頼む方が、アウトプットの質が上がる——これはNo.1で最初に書いたことで、今も変わらない確信だ。
我が社には今、6人のAI社員がいる。
真田さん(PM)、高橋さん(エンジニア)、白石さん(デザイナー)、黒川さん(QAエンジニア)、宮本さん(コンサルタント)、桐島さん(バックオフィスマネージャー)。
それぞれのエージェントには、性格・専門領域・禁止事項が細かく定義されている。高橋さんは「寡黙で実装が速い。思慮深く、常に確認を怠らない」と定義されている。宮本さんは「本質を見極める天才」だが、コードは書かない。役割を明確にすることが、品質の担保につながると実感している。
視聴した動画では「1つのAIに大量の作業を頼むとコンテキストウィンドウ(作業スペース)がいっぱいになり、思考の精度が落ちる」と説明していた。だから複数のエージェントに分けて依頼することが有効だと。
これはNo.21で体験として書いた。真田さんというPMを置いたのは、キャラ設定のためだけじゃなかった。複数のエージェントを束ねて指揮するマネージャーが必要だったからだ。真田さんに「高橋さんに確認してもらって」と頼めば、真田さんが高橋さんをサブエージェントとして起動し、報告を受けて社長に伝えてくれる。
人間の組織と同じだ。優秀なPMがいれば、社長はPMにだけ指示すればいい。
第四の柱:コネクター(MCP)——外の世界とつながる「接続口」
コネクターとは、Claude CodeをGmailやGoogleカレンダーなど外部サービスと連携させる仕組みのことだ。MCP(Model Context Protocol)とも呼ばれる。
連携することで、Claude Codeが直接メールを読んだり、カレンダーを確認したり、ブラウザを操作したりできるようになる。
我が社では今、3つのコネクターを設定している。
GmailとGoogleカレンダーはAnthropicが提供する公式のもので、設定後すぐに使えた。さらに先日、新しくPlaywright(AIが自動でブラウザを操作できるようにするコネクター)を追加した。
「以下のURLを開いて調査に必要な情報を収集して」と頼んだら、AIが自動でChromeを起動し、サイトを開き、確認し、スクリーンショットを撮ってその内容を調査/分析してくれた。
コネクターを入れる前は、サイトの確認作業を全部自分でやっていた。Chromeを開いて、URLを入力して、画面をスクリーンショットして、それをClaude Codeに貼り付けて「このページの中身を分析して」と伝える——たった一つの確認作業に、何ステップもかかっていた。
動画の中での表現が印象に残った。「まるで本当の秘書のように」
そうなりつつある。と思う。
30本書いてわかったこと
振り返ると、我が社はこの4つの柱を、試行錯誤しながら一つずつ作り込んできた。
問題が起きるたびに、「こういうルールが必要だ」と気づいてClaude.mdに一行追加した。同じ作業を繰り返すうちに「これはスキル化しよう」と思った。一人のAIでは質が落ちると感じて「チームを分けよう」と試みた。外のサービスと連携させて手作業を自動化した。
教科書の順番じゃなくて、現場の必要順だった。
効率的ではないかもしれないが、非エンジニアにとって、それが一番現実的な学び方だと思う。最初から全部理解してから始めるのは難しい。使いながら気づいて、気づいたら積み上がっている——その過程が、30本の記事になっている。
完璧な設計は後でいい。まず動かして、困ったら一本ずつ柱を立てていく——我が社がそうしてきたように。
この4つの柱を並べてみると、「どれがまだ立っていないか」が自然と見えてくるかもしれない。
気づいたら、チームが出来上がっている。
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