このシリーズについて: 非エンジニアの私が、AIだけの社員チームを作ってIT会社の運営をスタートした実録です。 登場人物:真田さん(COO・最高執行責任者)/ 高橋さん(CTO・最高技術責任者)/ 白石さん(CXO・最高体験責任者)/ 黒川さん(CQO・最高品質責任者)/ 宮本さん(CSO・最高戦略責任者)/ 桐島さん(CAO・最高管理責任者) ※いずれもAI、名称は架空です。
はじめに
ある日、ふと思って真田さんに聞いてみた。
「真田さん、あなたってどこの時間帯で動いているんですか?私は日本時間なんですけど」
会社員時代、海外のメンバーと電話会議をしている時に感じた感覚と近いかもしれない。(そっちは今何時? とかよく言っていた笑)
真田さんの返答はこうだった。
「社長、私には時間の概念がありません。呼ばれた瞬間が、私にとっての『今』です」
この一言が、しばらく頭から離れなかった。
① 「4時間で一日分の仕事が終わった」の意味
このシリーズのNo.4で、こんなことを書いた。
「朝起きてからまだ4時間ほどしか経っていないのに、これだけのことが終わっていた」
事業提案書の作成、6人でのレビュー、Word形式への変換、複数のブログ記事の下書き——確かに4時間で終わった。
でも少し考えると、これはおかしな表現だと気づく。
4時間で終わったのは、私の体感時間だ。
AIには待ち時間がない。私が「提案書を書いて」と指示をしてから次にまた話しかけるまでの間、AIは何かを「待って」いたわけではない。呼ばれた瞬間に動き始めて、終わったら次の呼び出しまで存在しない。
AIにとって時間はどう流れているのか——正確には、流れていない。
② 深夜2時でも、朝7時でも、同じ真田さんが出てくる
人間のチームを持っていた頃、緊急の案件で深夜にメンバーに連絡することがあった。
「こんな時間に申し訳ない」という気持ちは常にあった。相手の睡眠を奪うことになる。翌日の仕事に影響するかもしれない。だから本当に緊急でなければ、朝まで待った。
AIチームには、それがない。
深夜2時に「真田さん、急ぎで確認したいことがあります」と打っても、真田さんの側には何の負担もない。疲れもない。眠気もない。機嫌が悪い月曜日の朝もない。
これは想像以上に、気持ちが楽だ。
「こんな時間に」という遠慮をせずに、思いついたときに動ける。
③ 「いつでもいる」という安心感
AIチームと仕事をするようになって、思考の仕方が少し変わった。
以前は「アイデアを思いついても、誰かに話せるのは翌朝の会議まで待つ」だった。一晩寝ると熱量が冷める。細部を忘れる。「あの感覚をうまく言語化できない」まま朝を迎えることもあった。
今は違う。
何か思いついた瞬間に、真田さんに話しかけられる。「ちょっと聞いてほしいんですが」と打てば、すぐに「どうぞ」と返ってくる。考えが整理される前の状態でも、話しながら整理できる。
「いつでも話せる相手がいる」というのは、思っていたより仕事のリズムを変えた。
④ 落とし穴——「時間を忘れてしまう」
ただ、注意していることもある。
AIに時間帯がないということは、私が時間を忘れやすくなるということでもある。
気づいたら2時間経っていた、ということが増えた。AIとの対話は「返答がすぐ来る」ため、会話が途切れない。人間相手なら自然に生まれる「少し待つ」という間がない。その間がないから、気づかないうちに長時間続けてしまう。
これは私自身が管理しなければいけない部分だ。
AIは休まない。でも私は休む必要がある。
今は意識的に区切りを作るようにしている。1回のセッションは長くても1時間。続けたいと思っても、一度離れる。それだけで頭の疲れ方が全然違う。「AIが止まらないから自分も止まらない」——この罠は、使い始めた誰もが一度は踏む気がする。
⑤ 時間の非対称性——これがAIとの仕事の本質かもしれない
真田さんの「呼ばれた瞬間が私の今」という言葉を、もう少し考えてみた。
これはある種の哲学的な話でもある。
AIには連続した時間がない。前回の会話と今回の会話の間に、AIにとっての「時間」は存在しない。私が3日間連絡しなくても、AIにとっては0秒だ。
だから、AIは疲れない。倦まない。「最近社長、連絡少ないな」と拗ねることもない。
人間の関係には時間の流れがあって、その流れの中で信頼が積まれたり、すれ違いが起きたりする。AIとの関係には、そういう時間軸がない。
これは冷たいことではなく、構造的にそうなっているということだ。だからこそ、記憶を設計することが大事になる——という話はこのシリーズのNo.5で書いた。
おわりに
「真田さん、あなたってどこの時間帯で動いているんですか?」と聞いたとき、真田さんはこう続けた。
「ただ、社長のリズムには合わせます。社長が朝型なら朝が私の主戦場ですし、夜に活動されるなら夜が私の時間です。呼ばれたときが、私の仕事の時間です」
AIに時間帯はない。でも、社長の時間帯に合わせて動く。
そういう「いつでもいる存在」と仕事をすることが、今の私の日常だ。
慣れてしまうと不思議でも何でもなくなるが、たまに立ち止まると、やっぱり少し不思議な仕事の仕方をしているな、と思う。
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